Farsphere

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epilogue

 目を覚ますたびに違う場所にいる。
 今度は、柔らかいふかふかのベッドの上だ。恐る恐る体を動かし、祈るように目を開ける。体を起こし、掛布団をぱたぱた叩いて夢じゃないことを確かめて、やっとスーリンはほっとため息をついた。
 本当に、何もなくなってしまった。
 聖剣も、もちろん「聖剣の巫女」の肩書きも。
 若干の寂しさも感じていたが、むしろ心は重荷を取り払われたように軽かった。
 布団をめくって立ち上がると、ことんと小さな音を立てて何かが転がり落ちた。カーテンの隙間から差し込む朝の光を受けて小さな石のかけらが光っていた。体を屈めて、少女はそっとそれを拾い上げた。荒く削った透明な水晶のカケラだった。カーテンを開け、光に透かしてよく見ると、滑らで平らな部分に何か細かい文字が彫り込んである。
 お守りだ…と彼は言っていた。
 聖剣を渡したスーリンに代わりにと渡してくれた。血にまみれてぐったりとしながらも、その瞳は最初に見たときと同じように、心に突き刺さるように強かった。あふれ出るような気迫に押されて、スーリンは聖剣を手渡したのだ。
 少女は、思いっきり伸びをした。太陽の光は明るいけれど、窓に当たる風は凍り付くように冷たい。人の声や足音やいろんな音が聞こえてくる。神殿はいつもと同じように動き始めている。
 明け方の神殿に帰ってきた、身一つの情けない姿のスーリンを、ミルフェ様は泣きながら抱きしめて下さった。多大な迷惑をかけてしまったにも関わらず、水晶神殿はスーリンを受け入れてくれた。
 無くした物なんて、きっと大したものじゃない。
 ガジェットさんは、無理だと言っていたけれど、ソフィアさんにも、きっといつかまた会える。
 だって、伝えなくてはならないのだ。
 
 ありがとう、と。
 
 
 farsphere 1st stage 「White Snow」
 
 
 ―了―


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